最近、大手スーパーに行くと、会計のレジがセルフレジの方が多くなって来ていると実感します。今回は、様々な分野で進むDX化について、考えてみたいと思います。
社会の変化を映す鏡:データで見るレジのセルフ化
近年、スーパーや小売店でのレジの風景は大きく変わりました。お客様自身が精算を行うセルフレジや、商品のスキャンは店員が行い支払いをセルフで行うセミセルフレジの導入が加速しています。
統計データでも、特にセミセルフレジの導入率は多くの店舗で7割を超え、この流れは社会全体の大きな潮流となっています。これは、人手不足の解消や業務効率化といった、企業が抱える構造的な課題に対応するためのやむを得ない取り組みであると言えるでしょう。
シニア世代の戸惑い:「デジタルデバイド」という課題
企業側の効率化が進む一方で、シニア世代が直面する具体的な課題も見過ごせません。
セルフレジの操作では、「バーコードが読み取れない」「バーコードのない商品の検索が難しい」といった操作自体の複雑さに加え、「後ろのお客さんを待たせてはいけない」という心理的なプレッシャーが大きな負担となります。これは、デジタル技術の利用に慣れた世代とそうでない世代との間に生じる「デジタルデバイド(情報格差)」という社会的な課題が、レジという日常的な場面で顕在化している一例です。
また、レジ打ちという作業を自分で行うにもかかわらず、サービスや価格が変わらないという点にも、お客様としての「利便性」と「求められる作業」のバランスに対する素朴な疑問が残ります。
効率化の先に見たいもの:飲食店DXからの視点
スーパーだけでなく、居酒屋や飲食店でのタブレット・スマホによる注文(セルフオーダーシステム)も進んでいます。
もちろん、「自分のペースで注文できる」「店員さんを呼ばずに済む」といった利便性はありますが、同時に「操作がわずらわしい」と感じるときもあります。さらに、店員さんとのちょっとした会話や、おすすめを聞く楽しみなど、人と人とのコミュニケーションから生まれる温かいサービスが失われていくことに、寂しさを感じずにはいられません。
本来、DX(デジタルトランスフォーメーション)の本質とは、デジタル技術を通じて「お客様の体験価値を向上させること」を目指すものだと思います。
現状、セルフ化の流れは「企業側の業務効率化」の側面が強く出ている傾向があります。しかし、シニア層が感じる操作への戸惑いや、サービスの低下への懸念は、「すべてのお客様にとって本当に使いやすいサービス」がまだ発展途上にあると考えられます。
少子高齢化の今、デジタル社会の到来を否定することできません。シニア世代も、新しい技術を完全に拒否するのではなく、理解しようと努めるとともに、「使いやすさ」について積極的に声を上げる「参加者」としての視点を持つことが大切でしょう。そして企業側には、「効率化」だけでなく、「誰もが安心し、気持ちよく利用できる体験価値」を追求する、真のDXの実現を期待したいと思います。






