「日本一長寿の県はどこ?」と聞かれたら、多くの方が「沖縄」や「長野」を思い浮かべるかもしれません。しかし、現在の答えは滋賀県です!厚生労働省が発表した「令和2年都道府県別生命表」によると、男性は82.73歳、女性は88.26歳と、男女ともに全国トップクラスの平均寿命を誇っています。
なぜ、琵琶湖を抱える滋賀県が、静かに、そして力強く「ご長寿県」の座に躍り出たのでしょうか?そこには、単なる偶然ではない、滋賀県ならではの綿密な戦略と、それを支える県民の意識が隠されています。
「健康への1%投資」:無理なく健康習慣を日常に
滋賀県が長寿県へとシフトした大きな要因の一つに、「健康への1%投資運動」というキャッチーなスローガンがあります。これは、「1日24時間のたった1%(約15分)を健康のために使おう」というシンプルで分かりやすいメッセージ。
ウォーキング、自宅での軽い体操、食生活の見直しなど、日常生活の中で実践できる手軽な行動を推奨することで、「健康づくりは特別なことではない」という意識を県民に浸透させました。無理なく続けられる小さな習慣が、やがて大きな成果を生み出すことを県民全体が実感できたのでしょう。
喫煙率全国最低クラス:地道な努力が大きな成果に
滋賀県が全国平均寿命でトップクラスになった要因として、男性の喫煙率が全国でも際立って低いことが挙げられます。
具体的には、厚生労働省の「国民健康・栄養調査」によると、滋賀県の喫煙率は、2001年の男性39.3%から、2019年には21.9%へと大幅に減少しています。これは、全国平均(2019年:男性27.1%)と比較しても顕著な低さであり、特に男性の平均寿命延伸に大きく貢献したと考えられています。
滋賀県は、単に「禁煙しましょう」と呼びかけるだけでなく、禁煙治療への助成を充実させ、公共施設や飲食店における受動喫煙防止対策を徹底するなど、禁煙したい人が禁煙しやすい環境づくりを進めてきました。
しかし、何よりも大きかったのは、「健康は大切だ」「喫煙は健康を損なうものだ」という県民全体の意識改革が浸透したことです。罰則に頼るよりも、健康を最優先する社会的な「空気」が、喫煙という行動を自然に遠ざけていったのです。
地域で育む「健康推進員」の力
滋賀県の健康づくりの大きな特徴は、行政任せにしない「健康推進員」制度の存在です。各市町に設置された健康推進員協議会は、地域住民が自ら健康づくりのリーダーとなって活動しています。
彼らが中心となり、地域のサロンや文化祭などで、減塩味噌汁の試食会や健康学習会といった体験型・参加型の啓発活動を展開。これにより、一方的な情報提供ではなく、「顔の見える関係性」の中で、住民一人ひとりに寄り添い、具体的な行動変容を促すことが可能になりました。地域住民が健康の担い手となることで、啓発活動はより深く、より広範に浸透していったのです。
県全体で健康を支える仕組み
滋賀県は、健康づくりを行政だけで抱え込むのではなく、多様な主体が連携する「共創」の仕組みを重視しています。「健康しが」共創会議には、県、市町、企業、大学、NPO、地域団体など、様々な分野の組織が参加。
これにより、専門知識の活用から、地域に根差したきめ細やかな活動まで、多角的に健康増進を支援しています。例えば、県内大学と連携して健康メニューを開発したり、企業が従業員の健康増進に積極的に取り組んだりするなど、県全体で健康を支える相乗効果が生まれています。
堅実で勤勉な県民性
滋賀県の長寿化を語る上で、県民性も無視できません。一般的に、滋賀県民は「質実剛健」「堅実」「勤勉」といった気質を持つと言われます。派手なことを好まず、地道な努力をコツコツと続けることを得意とする傾向があるのです。
この県民性は、健康習慣のような日々の積み重ねが重要な分野で、大きな強みとなりました。特定のイベントやキャンペーンに一時的に盛り上がるだけでなく、日々の食生活や運動習慣をコツコツと続けることこそが、最終的に現在の成果へと繋がっているのでしょう。
「意外!」という驚きは、まさに滋賀県が成し遂げた、静かなる、しかし確かな健康革命の証です。琵琶湖の恵みと、県民の地道な努力、そして行政の計画的なサポートが一体となり、「ご長寿県・滋賀」はこれからもその輝きを増していくに違いありません。
滋賀県の事例を参考に、ぜひ身近な健康づくりを始めてみませんか。