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2025[Tue]
10.14

第2回:時間と空間の革命か、壮大な賭けか? ~新幹線開発~

今日は何の日日々雑感

前回の在来線編で確認した通り、東海道本線の輸送力は限界でした。この国難を救い、経済発展を確実にするため、旧国鉄が開発したのが「東海道新幹線」です。

新幹線は、旧国鉄の十河信二総裁と、技術のすべてを託された島秀雄技師長という二人の指導者の強力なリーダーシップの下、既存の鉄道技術を根本から覆す世界初の高速鉄道として誕生しました。

新幹線が決定的に変えた「移動の主役」

1964年10月の開業は、単なる速さ以上の経済効果を生み、わずか数年で人々の移動手段を決定的に変えました。

【東京〜大阪間の旅客輸送シェアの変遷】

区間(東京発着)在来線特急・急行新幹線航空機
1960年代初頭約55%0%約20%
1980年代わずか約83.7%約16%

開業前、約6時間40分かかっていた東京〜大阪間の所要時間を4時間(開業直後)に短縮した新幹線は、在来線のシェアを吸収し、すぐに輸送の主役に躍り出ました。この圧倒的な効率化が、日本の大都市間のビジネス往来を飛躍的に高め、「時間価値」の向上を通じて経済成長を後押ししたのです。

「地方新幹線」はゲームチェンジャーか?採算性の検証

東海道新幹線の成功後、全国に新幹線網を広げる「整備新幹線」計画が進められました。これは、地方の発展を促す「ゲームチェンジャー」として期待されていますが、その採算性については常に議論があります。

  • 巨額の建設コスト: 整備新幹線の建設費は、その区間の難易度にもよりますが、1kmあたり数十億~百億円超という巨大な費用がかかります。

【北陸新幹線によるコストとリターンの比較(概算)】

指標内容
年間の経済波及効果約2,700億円(交流人口増加による試算)
建設総事業費数兆円規模

地方新幹線は、交流人口の増加を通じて地域経済を活性化させるという公共財的側面を持っていますが、巨額の建設費と、比較的低い乗車率(特に東京から遠い区間や北に向かう新幹線の一部)を考慮すると、鉄道会社単体の採算性で建設コストを回収するには、極めて長い期間を要します。



したがって、「地方新幹線が経済発展の特効薬になる」という楽観的な期待だけでなく、「建設コストと、その維持に将来どれだけの公的負担が必要になるか」という、費用対効果の厳しい検証も不可欠なのです。


新幹線は、日本の経済効率を決定的に高めた革命的技術ですが、地方への延伸については、巨額のコストと低い乗車率という現実の前に、「地域維持のための壮大な公共事業」という側面が強いと言えるでしょう。



シニアライフアドバイザー ライター:添田 浩司

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