日本は、今年の夏も猛暑が予想され、熱中症への厳重な警戒が必要です。特に高齢者の方は、熱中症のリスクが高いことをご存じでしょうか? 加齢とともに、体内の水分量が減少し、のどの渇きを感じにくくなるため、気づかないうちに脱水症状が進んでしまうことがあります。
また、体温調節機能も低下するため、若い頃と同じような感覚で過ごしていると、熱中症にかかりやすくなります。持病をお持ちの方や、薬を服用されている方は、さらに注意が必要です。
熱中症は高齢者にとって特に危険な理由
実際に、熱中症で救急搬送される方や亡くなる方の多くが高齢者です。
2025年に入ってからも、すでに熱中症による救急搬送が多数報告されています。 総務省消防庁の速報値によると、
- 2025年6月16日~22日までの1週間で、全国で8,603人が熱中症で救急搬送されました。これは、今年に入ってからの週間搬送者数としては最多となり、前週の約9倍という急増ぶりです。
- このうち、65歳以上の高齢者が5,316人で、全体の61.8%を占めています。
- また、この1週間で18人の方が熱中症で亡くなられており、重症者も210人に上ります。
過去の傾向を見ても、熱中症で亡くなる方の8割以上が高齢者であり、2025年もこの傾向が続くことが懸念されます。 これらのデータからも、高齢者が熱中症に対して特に脆弱であることがお分かりいただけると思います。
熱中症のサインを見逃さないで!
熱中症の初期症状は、非常にわかりにくいことがあります。「少しだるいな」「食欲がないな」といった、なんとなく体調が悪いと感じる程度の場合もあります。しかし、これらのサインを見逃してしまうと、重症化する恐れがあります。
具体的な症状としては、
- めまいや立ちくらみ
- 筋肉のこむら返り
- 頭痛や吐き気
- 体がだるい、力が入らない
- 汗をかかなくなる(重症の場合)
などがあります。ご自身だけでなく、ご家族や周りの方にもこれらの症状が出ていないか、気にかけてあげてください。
今日からできる熱中症対策
熱中症は、予防できる病気です。日頃から意識して対策を行うことで、健康な夏を過ごすことができます。
1. 水分補給はこまめに、意識的に
のどが渇いていなくても、定期的に水分を摂るようにしましょう。目安としては、1時間にコップ1杯程度が良いとされています。水やお茶だけでなく、スポーツドリンクや経口補水液も効果的です。ただし、持病をお持ちの方は、医師に相談してから摂取するようにしてください。
2. 涼しい環境で過ごす工夫を
エアコンや扇風機を適切に使い、室内を涼しく保ちましょう。日中の暑い時間帯(午前10時から午後2時頃)は、外出を控えるのが賢明です。もし外出する場合は、日傘をさしたり、帽子をかぶったりして、日差しを避ける工夫をしましょう。 高齢者の熱中症は、住居内で発生する割合が最も高く、今回のデータでも搬送場所は住居が40.3%と最多です。 エアコンを適切に活用し、我慢せずに涼しい環境を保つことが非常に重要です。
3. 普段の生活習慣を見直す
バランスの取れた食事を摂り、十分な睡眠をとることも大切です。体が健康であれば、熱中症に対する抵抗力も高まります。また、入浴で体を温めすぎないように注意し、シャワーで済ませるのも良いでしょう。
ウォーキングなどの運動習慣がある方は、日中の暑い時間帯を避け、早朝や夕方以降の比較的涼しい時間帯に行うようにしましょう。水分補給も忘れずに、無理のない範囲で体を動かすことが大切です。
4. 周囲とのコミュニケーションを大切に
一人暮らしの方は、特に注意が必要です。ご近所の方やご家族と連絡を取り合い、体調の変化があった際にすぐに相談できる関係を築いておきましょう。地域の見守りサービスなども活用できる場合があります。
もし熱中症になってしまったら?
万が一、ご自身や周りの方が熱中症の症状を示したら、以下の応急処置を試みてください。
- 涼しい場所へ移動する: エアコンの効いた室内や、風通しの良い日陰に移動させましょう。
- 体を冷やす: 衣服を緩め、首元、脇の下、足の付け根など、太い血管が通っている場所を冷たいタオルや保冷剤で冷やします。
- 水分・塩分を補給する: 意識がはっきりしているようであれば、経口補水液やスポーツドリンクを少しずつ飲ませましょう。
- 医療機関を受診する: 症状が改善しない場合や、意識がない場合は、すぐに救急車を呼びましょう。
2025年も暑い夏が予想されますが、正しい知識と準備で、熱中症を予防し、健やかに過ごしましょう。ご自身だけでなく、周りの人たちにも、熱中症対策の声かけを忘れずに行ってください。