人生の大きなターニングポイントである「引越し」。今回は、「引越しの日」をテーマに、その意味合いと、私たち日本人の住まいと移動の歴史を紐解いてみたいと思います。
まず、皆さんご存知でしたか?
毎年10月13日は「引越しの日」として、引越専門協同組合連合会関東ブロック会が1989年(平成元年)に制定した記念日です。
その由来は、1868年(明治元年)のこの日、明治天皇が京都御所から江戸城(現在の皇居)に入城されたことにちなみます。この出来事は、日本の首都が京都から東京に移る「東京奠都(とうきょうてんと)」の始まりであり、近代日本の大きな「引越し」として捉えられています。
「引越しの日」と聞くとシンプルですが、不動産の契約においてはいくつかの重要な日付と区別して理解する必要があります。
| 日付 | 定義 | 意味合い |
| 引越しの日 | 実際に旧居から荷物を運び出し、新居へ搬入する日。 | 物理的な移動が行われる日。引越し業者に依頼する場合は、この日が作業日となります。 |
| 入居日 | 新居の賃貸契約が始まり、家賃が発生し始める日。 | 契約上の開始日。引越し日は、この入居日以降に設定する必要があります。 |
| 退去日 | 旧居の賃貸契約が終了し、部屋を明け渡す期限の日。 | 契約上の終了日。引越し日は、この退去日より前に設定するのが基本です。 |
つまり、「引越しの日」とは、新旧の住まいの契約の間に設けられた、あなたの新しい生活が物理的にスタートする日なのです。
現代では引越し専門業者に依頼するのが一般的ですが、その移動の歴史は時代とともに大きく変化してきました。
A. 平安時代:貴族の「引き越し」
現代の「引越し」の語源は、平安時代の貴族の慣習にあると言われています。この時代の「引き越し」は、身分の昇進などに伴い、小さな屋敷からより大きな屋敷へ移り住むことを指していました。
B. 江戸時代:「宿替え」「家移り」の日常化
庶民の引越しが始まったのは、江戸時代に入ってからです。
- 「裸貸し」の文化: 家財道具を運ぶ手間を省くため、家具をレンタルしたり売買したりする「裸貸し」が一般的でした。多くの庶民の荷物は少なく、大八車などで事足りるケースが多かったとされます。
- 挨拶の風習: 新居のそばに来たという洒落で「引越し蕎麦」を近所に配る風習が生まれました。
C. 戦後〜現代:引越し業の誕生とプロ化
引越しのスタイルが劇的に変わったのは、戦後の高度経済成長期です。
- トラックの普及: 従来の馬車に代わりトラックが普及し、引越しは運送業者に依頼する形が一般化しました。
- 「引越し専門業者」の誕生: 都市への人口流入と需要の増加に伴い、梱包から運送、設置までを専門的に行う現在の引越し専門業者が誕生し、引越しはより手軽で迅速なサービスへと進化を遂げました。
次回予告
第2回では、現代日本の具体的な引越し事情を、総務省の公的データに基づき「引越し件数」「移動する人の年齢層」「引越しが多い県・少ない県」といった視点から詳しく解説します。どうぞお楽しみに!






