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2025[Wed]
05.21

IHコンロの秘密

健康なくらし

IH(Induction Heating:電磁誘導加熱)コンロは、火を使わずに調理ができる安全で高機能な調理器具として、多くの家庭で普及しています。その最大の特長は、鍋そのものを発熱させることで食材を加熱する仕組みにあります。

IHコンロの仕組み:交流電流が熱を生む

IHコンロの内部には「コイル」が埋め込まれています。このコイルに交流電流を流すと、「磁力線」が発生します。重要なのは、この電流が交流であるという点です。交流電流は、電流の向きが周期的に変化します。この向きの変化によって、コイルから発生する磁力線も常に強くなったり弱くなったり、あるいは向きを変えたりと、変化し続けます

この変化する磁力線が鍋底を通過する際に、鍋底の金属に「うず電流(誘導電流)」を発生させます。小学校の理科の実験で直流電流を使って電磁石を作った際、鉄が磁石にくっついたのは、直流電流が安定した磁場を作り出し、鉄を磁化させたからです。しかし、IHコンロの場合は交流電流のため、磁力線が常に変化します。この変化する磁力線が、鍋底の金属に「磁化されてくっつく」のではなく、「電流を誘導する」という形で作用します

このうず電流が鍋底の金属内部を流れる際に、金属が持つ電気抵抗によって熱が発生します。これがIHコンロで鍋が熱くなる仕組みです。これを「ジュール熱」と呼びます。

簡単にまとめると、以下のステップで熱が発生します。

  1. 交流電流がコイルに流れる: IHコンロ内部のコイルに高周波の交流電流が流れます。
  2. 変化する磁力線が発生: 交流電流の向きが周期的に変わるため、コイルから常に変化する磁力線が発生し、鍋底を貫通します。
  3. うず電流が発生: 鍋底の金属に磁力線の変化が伝わり、「うず電流」が発生します。直流回路のように磁石にくっつくのではなく、変化する磁力線が金属内部に電流を誘導するのです。
  4. ジュール熱が発生: うず電流が鍋底の金属の電気抵抗によって熱に変換され、鍋自体が発熱します。

IHコンロのメリット

この電磁誘導加熱の仕組みによって、IHコンロには様々なメリットが生まれます。

  • 高い安全性: 火を使わないため、火事のリスクが低く、お子様や高齢者がいる家庭でも安心して使用できます。立ち消えの心配もありません。
  • 高い熱効率: 鍋自体が発熱するため、熱が鍋に直接伝わり、非常に高い熱効率を実現します。これにより、調理時間の短縮や省エネにつながります。
  • クリーンな環境: 燃焼がないため、室内の空気を汚さず、一酸化炭素中毒の心配もありません。
  • お手入れのしやすさ: トッププレートがフラットなため、汚れてもサッと拭き取るだけで簡単にお手入れができます。
  • 火力調節の正確さ: 細かい火力調節が可能で、とろ火から強火まで思い通りの加熱ができます。

IHコンロの注意点

一方で、IHコンロにはいくつかの注意点もあります。

  • 使用できる鍋の制限: 電磁誘導加熱の仕組み上、鍋底に磁性体を持つIH対応の鍋しか使用できません。土鍋やガラス製の鍋、銅鍋などは基本的に使用できません。
  • 電磁波の発生: 微量ながら電磁波が発生します。しかし、発生する電磁波は国際的な安全基準値を大幅に下回っており、健康に影響を与えるレベルではありません。
  • 初期費用: ガスコンロと比較して、本体価格がやや高価になる場合があります。

まとめ

IHコンロは、交流電流がコイルに流れ、変化する磁力線が鍋にうず電流を誘導することで熱を生み出すという、電磁誘導加熱という独自の仕組みによって、安全で効率的、そしてクリーンな調理環境を提供します。小学校の実験で体験したような、鉄が磁石にくっつく現象とは異なり、IHコンロの鍋が発熱するのは、交流電流が生み出す「変化する磁場」によって鍋自体に電流が流れるためです。その高い機能性と使い勝手の良さから、現代のキッチンに欠かせない調理器具の一つとなっています。適切な鍋を選び、その特性を理解して使用することで、より快適で美味しい料理を楽しむことができるでしょう。




シニア向け住宅アドバイザー ライター:添田 浩司

安心安全な住まい、日々の健康や、自分らしい暮らしに役立つ情報、地域の話題などを配信していきます。

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