皆様、こんにちは!今回は、私たちの松阪の歴史と文化に深く根ざした、とある神社のお話です。それは、松阪市小野町にひっそりと佇む神麻続機神社(かんあさつきじんじゃ)。この神社の名前、どこかで聞いたことがあるでしょうか?実は、この神社こそが、かつての松阪の繁栄の礎を築いた、大切な場所なのです。

大陸から伝わった機織りの技術
今からずっと昔、まだ日本が大陸との交流を始めたばかりの頃、遠い異国の地から、新しい技術を持った人々がこの松阪の地にやってきました。彼らがもたらしたのは、当時としては画期的な機織りの技術です。それまでの日本にはなかった、美しく丈夫な布を織る技術は、瞬く間にこの地に広まり、人々の暮らしを豊かにしていきました。
神麻続機神社は、まさにこの機織りの技術を伝えた人々、そしてその技術そのものを祀る神社として建立されました。当時の人々にとって、機織りは単なる手仕事ではなく、生活を支える重要な産業であり、神聖なものとして扱われていたのです。
松阪木綿と豪商の繁栄
機織りの技術が発展するにつれて、松阪は「松阪木綿」と呼ばれる、独自の美しい綿織物の産地としてその名を轟かせるようになります。松阪木綿は、その丈夫さと粋な縞模様で江戸の町でも大人気となり、松阪は一大商業都市へと発展していきました。
この松阪木綿の隆盛を語る上で欠かせないのが、江戸時代に活躍した松阪の豪商たちです。中でも有名なのが、長谷川家。彼らは松阪木綿の仲買人として巨万の富を築き、その財力は江戸幕府をも凌ぐと言われるほどでした。長谷川家の繁栄は、まさに神麻続機神社がもたらした機織りの技術、そしてそれを礎とした松阪木綿の成功なしには語れません。
長谷川家をはじめとする松阪の商人たちは、自分たちの富を社会に還元し、松阪の町づくりにも貢献しました。彼らが築き上げた商業のネットワークは、現代の松阪にも脈々と受け継がれています。
静寂と輝きに包まれた現在の神麻続機神社
先日、私も神麻続機神社を訪れてみました。松阪市小野町の田園地帯の中に、こんもりと盛り上がった、ひときわ目を引く林があります。その林の中央に、こじんまりとした鳥居が見え、そこが神社の入口でした。

▲こんもりという表現がぴったりの林

▲入るのがためらわれるくらいの入り口
昼間にもかかわらず、鬱蒼とした木々に覆われた境内は、まるで深い森の中に入り込んだかのような、ひんやりとした空気に包まれていました。周囲の明るい田園風景とは一転、そこだけが別の空間のように感じられ、静寂が支配しています。
しかし、その暗がりの中を奥へと進んでいくと、突然、目の前に光が差し込む場所が現れました。そこは、木々が生い茂る境内の中心に、まるでスポットライトが当たったかのように、まばゆい光に包まれた神殿です。周囲に木がないおかげで、太陽の光が直接降り注ぎ、神殿は文字通り光り輝いているように見えました。その神々しい光景は、歴史の重みを感じさせる静寂な境内とは対照的で、思わず息をのむほどでした。

▲光ってみえます
松阪木綿の魅力と機織り体験
さて、松阪の繁栄を支えた「松阪木綿」について、もう少し掘り下げてみましょう。松阪木綿の最大の特徴は、天然藍の先染め糸を使い、濃淡で表現される多様な縞模様です。江戸時代には「松坂縞」と呼ばれ、粋を好む江戸っ子たちの間で大流行しました。歌舞伎の演目にも「マツサカを着る」というセリフが登場するほど、その人気は絶大なものだったと言われています。丈夫で安価でありながら、洗練されたデザインは、当時の庶民にとって最高の普段着だったのです。
この松阪木綿の伝統は、現代にも受け継がれています。松阪市にある松阪もめん手織りセンターでは、松阪木綿の歴史や魅力を学ぶことができるだけでなく、実際に機織り体験をすることも可能です。初心者の方でも気軽に楽しめる「プチ織姫体験」(1時間程度で小物敷きを織るコース)や、本格的にじっくりと取り組める「一日織姫体験」(4〜5時間で1mほどの反物を織るコース)など、様々なコースが用意されています。自分で織り上げた松阪木綿の作品は、きっと旅の素敵な思い出になることでしょう。
古代と現代をつなぐ神麻続機神社
神麻続機神社は、派手さはありませんが、松阪の歴史を静かに見守り続けてきたパワースポットです。ここを訪れると、遠い昔、大陸からやってきた人々がこの地で機織りの技術を伝え、それがやがて松阪の豪商たちの繁栄、そして今日の松阪の礎となったという壮大な物語に思いを馳せることができます。
松阪の町を歩く際には、ぜひ神麻続機神社の存在を思い出してみてください。そして、もし訪れる機会があれば、その静寂な空間で、そして光り輝く神殿で、古代からの松阪の息吹を感じてみてはいかがでしょうか。さらに、松阪もめん手織りセンターで、松阪木綿の魅力を肌で感じ、機織りの体験を通して、この地の歴史と文化に触れてみるのもおすすめです。きっと、いつもとは違う視点で、松阪の歴史と文化を感じることができるでしょう。
この街ガイドの記事を読んで、神麻続機神社と松阪木綿に興味を持っていただけましたでしょうか?ぜひ一度、足を運んでみてくださいね。






