日本人の心のふるさと、伊勢神宮。 「一生に一度は」と江戸の庶民が憧れ、今なお年間800万人もの人々が祈りを捧げる場所。 大人になった今だからこそ、賑やかな観光旅行とは一味違う、静謐で知的な伊勢参りをしてみてはいかがでしょうか?

ゴールドライフ高茶屋からは、車でわずか40分ほど。 思い立ったらすぐに行ける距離に、その聖域はあります。 今回は、知っているようで知らない伊勢神宮の深層と、門前町に秘められた再生の物語を紐解く、長編紀行を3回に分けてお届けします。
【第1回】なぜ人は伊勢を目指すのか。「125社の総本山」と「式年遷宮」の謎
まず、私たちは「伊勢神宮」という呼び名に馴染んでいますが、正式名称は単に「神宮」といいます。 これ以上の修飾語を必要としない、すべての神社の頂点にある存在だからです。
そして、神宮はひとつの建物を指すのではありません。 三重県伊勢市とその周辺に点在する、大小合わせて「125社」ものお宮の総称なのです。 神宮とは、いわば巨大な「神の森」であり、その中に神々が住まう都市システムが形成されています。
その中心に鎮座するのが、二つの正宮です。
- 外宮(げくう):豊受大神宮
- 内宮(ないくう):皇大神宮
古くからの習わしで、「お伊勢参りは外宮から」と言われます。なぜでしょうか。 外宮にお祀りされている豊受大御神は、内宮の天照大御神の「お食事係」として招かれた神様です。そこから転じて、衣食住や産業を守る神様とされています。
会社組織で例えるなら、内宮が「会長・創業者」であり、外宮は実務を取り仕切る「総務・財務のトップ」あるいは「社長」のような存在です。 まず日々の生活を守ってくれる神様に感謝し(外宮)、身を整えてから最高の神様(内宮)に会いに行く。 この順序には、礼節を重んじる日本人の精神性が色濃く表れています。
伊勢神宮を語る上で欠かせないのが、20年に一度の大事業「式年遷宮」です。 1300年前、持統天皇の時代から連綿と続くこの儀式は、社殿から神様の衣装、宝物に至るまで、すべてを全く同じ形に新しく作り替え、神様に引っ越していただくというものです。
西洋の石の建築が「不変の永遠」を目指したのに対し、日本の木の建築は「常若」という思想を選びました。 建物は古くなりますが、定期的に新しく作り替えることで、神様の力も常に瑞々しく保たれる。 そして20年というサイクルは、宮大工が技術を次世代へ継承するために不可欠な期間でもあります。 物質的な古さを尊ぶのではなく、常に新しくあり続けることで永遠を保つ。この独自の哲学こそが、伊勢神宮が今なお聖地であり続ける理由なのです。






