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Machi Guide
街ガイド
2025[Fri]
07.11

第2回:御城番屋敷の謎を解く

紀州街道伊勢路歴史御城番屋敷松阪城



さて、松阪城の歴史シリーズPERT2です。松阪城跡を後にし、そのすぐ隣に広がる「御城番屋敷」へと足を延ばしましょう。まるで時が止まったかのような武家屋敷の長屋が連なるこの場所は、現在でも映えるフォトスポットとして、様々なメディアに登場しています。さて、この御城番屋敷ではどんな武士たちが暮らし、どのような運命を辿ったのでしょうか。そして何よりも、なぜこの歴史的な建物に今も人々が住み続けているのか?その謎に迫ります。

幕末に生まれた「御城番屋敷」の歴史的背景

御城番屋敷は、幕末の1863年(文久3年)に、松阪城南東の三の丸に新築された組屋敷(長屋)です 。この屋敷は、松阪城の警護を任務とする紀州藩士20人とその家族の住居として建てられました 。  

御城番を務めた紀州藩士たちは、かつて徳川家康の先鋒隊である横須賀党の家柄であり、家康の息子である初代紀州藩主頼宣の家臣として仕えた直臣でした 。しかし、安政2年(1855年)に突如、安藤家の家臣となるよう命じられ、直臣から下級家臣へと降格させられたという複雑な経緯を持っています 。彼らが松阪に派遣された背景には、単なる城の警護だけでなく、このような藩内の政治的・身分的な変動が影響していた可能性があり、彼らの生活が常に安定していたわけではないという、より複雑な実情がうかがえます。  

御城番屋敷が1863年という幕末の時期に築造されたという事実は、単なる建築年以上の意味を持ちます。大政奉還が1867年(慶応3年)であることを考えると 、この屋敷は武士の時代が終焉を迎えるわずか数年前に建てられたことになります。これは、武士たちが新たな時代への変化を予期せず、あるいは抗いながらも、その役割を全うしようとしていた最後の時期の象徴であり、彼らの運命の皮肉さを物語っていると言えるでしょう。この屋敷は、まさに「武士の時代の終わり」を肌で感じさせる場所なのです。  

るろうに剣心と御城番屋敷の意外な繋がり

みなさんご存じでしょうか?この御城番屋敷は、意外なことに現代の人気映画の舞台にもなっています。大ヒット作『るろうに剣心 最終章 The Beginning』のロケ地として使用されたのです 。特に、雪代巴(有村架純さん)が弟の雪代縁(荒木飛羽さん)の寝姿を見守る印象的な場面が、この屋敷の一軒で撮影されました 。  

現在、西棟北端の一軒は内部が無料公開されており、映画のロケ地となった場所を見学することができます。そこには、撮影時の写真も飾られており、映画ファンにとってはたまらないスポットです。  


御城番屋敷が人気映画のロケ地となったことは、単なる観光地の宣伝以上の意味を持ちます。これは、歴史的建造物が現代のポップカルチャーと結びつくことで、新たな層、特に若い世代にその存在を知らしめ、歴史への興味を喚起する強力なツールとなり得ることを示しています。映画のファンが「聖地巡礼」として訪れることで、歴史的建造物の維持管理や地域経済への貢献にも繋がります。

映画のロケ地として選ばれた背景には、御城番屋敷が「ほぼ当時のまま住居として継続して使用・維持管理されている」というユニークな特性があります 。単なるセットではなく、実際に武士が暮らした時代の面影が色濃く残る場所だからこそ、そこで撮影する意味があったと考えます。

国指定重要文化財が個人管理される理由

御城番屋敷は、2004年12月10日付けで「旧松坂御城番長屋」として、国の重要文化財に指定されています 。しかし、その所有と管理は国や県ではなく、旧紀州藩士の子孫による団体「合資会社苗秀社(びょうゆうしゃ)」が行っているという、全国的にも極めて珍しい形態をとっています 。  

苗秀社は、明治維新によって徳川幕府が終わりを告げ、武士の存続基盤が消滅した際に設立されました 。家禄奉還制度によって与えられた現金や公債を持ち寄り、自分たちの象徴である御城番屋敷を守り、今後も協力して生きていくことを決意したのです 。設立当初の会社内規には「わが党各家は永世変わらず、苦楽をともにし、家門の繁栄を図ることを主眼とする」と記されており、その強い意志が現在も受け継がれています 。  

この個人管理の最大の利点は、日々人が生活を送ることで、建物の不具合に早期に気づき、修繕やメンテナンスを迅速に行える点にあります 。単に古い建物を残すだけでなく、それを「生きた空間」として活用し、現代の生活と結びつけるという点で非常に革新的です。

御城番屋敷は、現在も住居として使用されています。管理人さんにお聞きしたところ、間取りは3DKか4DKで、広さは約91㎡です。管理人さんから、「ちなみに家賃はいくらだと思う?」とクイズを出されたので、「家賃は駐車場込みで8万円」と回答したらぴったしカンカンでした。さすがでしょう?昔の建物で、そのままでは生活できないため、水回りはリフォーム済みです 。玄関や窓も木製ではなく、アルミサッシが入っています。個人的には、歴史的価値を考えれば、10万円程度までは十分設定できる気がします。借主の年齢層は様々で、「この美しい町並みと歴史ある建物に魅力を感じ、『ここで暮らしたい』『この環境で子育てをしたい』と入居を希望されるそうです 。過去の歴史が現代の人々の心に響き、新たな価値を生み出しているとすると、とても感慨深いです。


シニア向け住宅アドバイザー ライター:添田 浩司

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