山門を抜けると、正面と右手に、巨大なお堂が二つ並んでいます。 「御影堂(みえいどう)」と「如来堂」です。 2017年に揃って国宝に指定されましたが、多くの人が「どっちにお参りすればいいの?」「何が違うの?」と戸惑います。 実はこの二つ、役割と建築のコンセプトが明確に異なります。

1. 宗祖を慕う巨大空間「御影堂」
正面にドーンと構える、一番大きなお堂です。
- 祀られている方:親鸞聖人(宗祖)の木像
- 役割:親鸞聖人の教えを聞く「道場」
- 特徴:とにかく「広い」です。畳725枚敷きという広さは、全国の国宝木造建築の中でも5本の指に入ります。

なぜご本尊(仏様)のお堂より、人間である親鸞聖人のお堂の方が大きいのか。 それは浄土真宗が「聴聞(ちょうもん)」、つまり大勢の門徒が集まって教えを聞くことを何より大切にするからです。 堂内は金箔や極彩色で彩られ、極楽浄土を表現した黄金の空間が広がっています。お七夜などの大きな行事は、主にこちらで営まれます。

2. 建築技術の密度に圧倒される「如来堂」
御影堂の西側に並んで建つお堂です。少し小さく見えますが、実は建築通が唸るのはこちらです。

- 祀られている方:阿弥陀如来(ご本尊)
- 役割:仏様を礼拝する本来の「本堂」
- 特徴:「建築技術の密度」が凄まじいです。
御影堂が「広さ」を追求したのに対し、如来堂は「密度」と「装飾」を追求しています。 ぜひ、軒下(屋根の裏側)を見上げてみてください。 屋根を支えるための「組物」と呼ばれる木製パーツが、びっしりと隙間なく並んでいるのが分かります。これは「三手先」という非常に複雑な組み方で、重い屋根を支える機能美と、視覚的な重厚感を両立させています。
さらに注目すべきは「木鼻」と呼ばれる柱の先端部分です。 象や獏、獅子、龍といった霊獣たちが、今にも飛び出してきそうなほどの躍動感で彫り込まれています。 禅宗様式を取り入れたその緻密さは、まさに江戸時代の宮大工が腕によりをかけて作り上げた「木の宝石箱」。 シンプルで雄大な御影堂と、緻密で豪華な如来堂。この対比を味わうことこそ、高田本山巡りの醍醐味です。






