登場人物:
- 花子さん:60代の主婦。相続について漠然と不安を感じている。
- 恵子さん:60代。数年前にご両親の相続を経験した。
「借金も相続」は、もはや他人事ではない
花子さん 「恵子さんの話を聞いて、親の借金が怖くなってきたわ。うちの夫は堅実な人だから大丈夫だとは思うけど…もし多額の借金があったらどうしよう。」
恵子さん 「その不安、すごくよくわかるわ。相続っていうのは、預貯金や不動産といった『プラスの財産』だけじゃなくて、借金や未払金といった『マイナスの財産』もすべて引き継ぐことになるからね。」
花子さん 「もし借金の方が多かったら、私たちがその分を負担しないといけないのよね…。」
恵子さん 「その通り。だから、借金を残したくないと考える人が増えているの。家庭裁判所に申し立てられる『相続放棄』の件数を見れば、その状況がよくわかるわ。」
相続放棄の件数推移:この半世紀で約50倍に
家庭裁判所で受理された「相続放棄の申述」の件数は、この半世紀で急増しています。
| 時期 | 相続放棄の受理件数(概算) |
| 1965年頃(昭和40年頃) | 5,000件未満 |
| 1975年頃(昭和50年頃) | 1万件程度 |
| 1985年頃(昭和60年頃) | 2万件程度 |
| 1995年頃(平成7年頃) | 5万件程度 |
| 2005年頃(平成17年頃) | 15万件程度 |
| 2023年(令和5年) | 約28.2万件 |
(出典:最高裁判所事務総局「司法統計年報」より概算および推定)
相続放棄の件数は、1965年頃から現在までに約50倍以上に増加し、現在は年間28万件を超える水準で過去最高を更新し続けています。
これは、「財産がない」と考える家庭が増えていること以上に、親の借金や、親族間の面倒な関係を断ち切りたいという人が増えていることを示しているわ。
隠れた借金と「連帯保証人」の責任
花子さん 「28万件ってすごい数ね…。でも、もし借金があったとして、どうやってわかるのかしら?」
恵子さん 「そこが一番怖いところよ。親が借金をしていても、わざわざ家族には言わないでしょう?消費者金融からの借入や、個人的な貸し借りなんて、亡くなって初めて通帳や郵便物で発覚することも多いの。」
花子さん 「亡くなってからでないとわからないなんて…。」
恵子さん 「特に恐ろしいのは、『連帯保証人』のリスクよ。もしお父様が誰かの事業の連帯保証人になっていた場合、その地位は相続人が引き継ぐことになる。保証債務の存在すら知らなかったのに、本人が亡くなった途端に債権者から『代わりに全額支払え』と請求書が届く可能性があるのよ。」
花子さん 「それはもう、財産が少ないどころか、突然マイナスを背負わされるということね…。」
期限はたったの3ヶ月!準備の重要性
恵子さん 「そうならないために、相続人には『3ヶ月』という大事な期限が設けられているの。」
花子さん 「3ヶ月?」
恵子さん 「ええ。親が亡くなり、自分が相続人だと知った日から『3ヶ月以内』に、借金の方が多ければ、家庭裁判所に『相続放棄』を申し立てる必要があるわ。これをすれば、借金も連帯保証人の責任もすべて引き継がなくて済むの。」
花子さん 「たった3ヶ月で、親の全財産と借金を調べて、判断しないといけないなんて、大変すぎるわ…。」
恵子さん 「そうなの。だから、何の準備もなくその日を迎えるのは危険よ。親が生きているうちに、借入や連帯保証の有無について、できる範囲で確認しておくことが、残された家族を借金のリスクから守る、何よりの対策になるわ。」
シリーズまとめ:相続準備は「家族を守る最終防衛線」
相続は「財産争い」のリスクだけでなく、「負債」を背負うリスクも同時に内包しています。
- 相続放棄の件数が示す通り、誰もが「借金リスク」と無縁ではない。
- 借金や連帯保証人の情報は隠されていることが多く、発覚が遅れると、相続放棄の「3ヶ月の期限」を過ぎてしまう危険がある。
財産が少ないご家庭ほど、「まさか」の借金や保証人リスクがないか、生きているうちに確認し、家族で話し合っておくことが大切です。
次回予告: 第3回は、仲良し家族にこそ潜むリスク。「うちは仲が良いから大丈夫」が危ない?普通の家庭で相続争いが起きる理由をお届けします。どうぞお楽しみに。






